


もう6、7年以上前に91歳で亡くなったが、訳あって今はじいちゃんが建てた家に住んでいる。
普段は、かなり寡黙な人だったが、恋愛の話になると人が違ったように語り出していたことを良く覚えている。
昨日、微笑みを浮かべたじいちゃんが夢の中に出てきた。何かを語るわけでもなく、ただただ微笑んで俺を見つめてくれていた。
かなりのプレイボーイだったじいちゃんに教えてもらった恋愛テクニックを紹介していこうと思う。
書いていて思ったことは、これは恋愛の枠を超えた人生の教訓であるように感じる。是非とも参考にしていただけると有難い。
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もくじ
女を落とす不変の恋愛テク!戦争を生き抜いたヤリチン祖父が教える

大学生の時に、ある講義で一緒になった女の子に一目惚れをしてしまった。
俺は中学・高校と男子校のため、女子と同じ空間で勉強するのは小学生以来であった。

と試行錯誤していた日々を過ごしていた時、オカンからじいちゃんの家に届け物をしてほしいと言われた。
半ば面倒だと感じながらも、じいちゃんからお小遣いをもらえるから、高時給バイトだと割り切ってじいちゃんの家に行った。
じいちゃんの家に着くと、じいちゃんは相撲を見ながらタバコを吸っていた。

「おう…」とだけ答え、俺の方は一切見ず、視線はテレビの中の相撲だった。
しばらく沈黙が続き、相撲の実況が流れるだけの時間が20秒程続いた。



「お前も吸うか?もう成人やろ?」
(まだ19なんやけど!)と心の中でツッコミながらも、

と思い、人生で初めてタバコを吸うことにした。
もちろん、俺は咳込んだ。
咳込む俺を見ても、じいちゃんは何も言わずにひたすら相撲を見ていた。
まだお小遣いは貰えそうにないと思い、どうしようか考えた。ハッキリ言って相撲には全く興味がない。
何を血迷ったのか、俺はじいちゃんに日々悶々としている一目惚れした女の子の話をしてみた。
教えその1:目先ばかりを見るな、先を見ろ


・・・沈黙が続いた。
「待った!」急にじいちゃんが言った。
相撲で「待った!」が入ったのかと思いながらも、話を続けようとしたその時、じいちゃんがテレビを消した。
「玉砕したらその先はない。1%でも付き合える可能性を残せ。目先ばかりを見るな、先を見ろ。分かるか?」
と俺の方を見て、微笑みながら話してくれた。
教えその2:正面から攻めるな。周りから攻めろ
じいちゃんが一言以上話したことにビックリした俺は、「え?!」とだけ言うと、じいちゃんはもう一度言った。
「まずは友達になれ!話はそこから。」
(玉砕?)と心の中で思いながら、そう言えば、じいちゃんは戦争しに中国に行ったことがあると聞いたことを思い出した。
詳細は聞いていないが、食べる物もなく、ネズミやヘビを捕まえて飢えを凌いだらしい。今思い返すと、そんなじいちゃんらしいコメントだったように思う。
じいちゃんから教えてもらった「友達になれ!」と言われてもどう友達になれば良いか分からなくなり、またも悶々とする日々を過ごしていた。
その日はパチンコで勝ち、じいちゃんが好きなタバコをカートンで交換して、じいちゃんの家に持って行った。

相変わらず相撲を見てタバコを吸っているじいちゃんは、「おう!」とだけ答えた。その時には俺も立派なスモーカーになり、じいちゃんと一緒にタバコを吸っていた。
冷蔵庫の中の缶コーヒーを取りに行った俺の背後から「回り込め!」とじいちゃんが言った。また相撲のことかと思い、振り返りテレビを見たが、既にテレビは消されていた。
「正面突破できるのは、ほんの一握りの人だけ。その子の周りにいる友達と仲良くなれ。そうすれば自然とその子と接点ができて、友達になれる。いいか?腕っぷしに少々の自信があっても正面突破できるのは限りなく少ない。現にお前も正面突破できる男ならもうしとるはずや。だから、正面から攻めるな。周りから攻めろ。その子の周りにいる友達ならそこまで意識しなくても話ぐらいできるやろ。」と微笑みながら俺に語ってくれた。
もはや、じいちゃんが好きな相撲に例えて話しているのか、何とか生き抜けた戦争体験から話しているのか分からなかったが、とにかく素直に実践してみようと思ったことは今でも覚えている。
早速、じいちゃんからの教えを実践しようとその子の周りの子に話しかけてみることにした。
ちょうどテスト前ということもあり、

という理由でその子のグループ(3人グループ)のリーダー的存在の子に話しかけた。意外にも反応は良く、すんなりと教えてくれた。
味を占めた俺は、講義に行っていなかったところを教えてほしい、とまたもお願いしてみた。「え~!私はそこまで頭良くないから教えられない!」と言われたが、

と言い、何とかスタバに行く約束を取り付けることができた。しかも!あの子もいる。この上ない喜び。(じいちゃん、ありがとう!)
ここであの子との接点を持つことができた俺。ラッキーなことに俺が行っていなかった講義のところをメインで教えてくれたのがあの子だった。そろそろ名前で呼びたいため、以降はカンナとする。
カンナは、教えるのが上手かった。何より声が可愛かった。そして、天使のような笑顔。
現代風で言えば、「カンナしか勝たん」である。勉強を教えてもらった後は、キャンパス内で会えば自然と喋るまでの関係になっていた。
世間話や身の上話はするものの、2人きりになることはなく、どうにかして2人きりで話す機会はないものか、とまたしても悶々とした日々を過ごす毎日。
だが、俺には良きアドバイザーがいる。じいちゃんが大好きな御座候(関西の大判焼き)を買い、またしてもじいちゃんの家に向かった。

と家に入ると、テレビは消されており、タバコを吸って待っていた。
俺もタバコを咥え、火を付けた。「あんな?」と言おうと思った矢先、じいちゃんが言った。
教えその3:機を逃すな。男たるもの機を見つけたら迷わず突き進め
「機を逃すな。男たるもの機を見つけたら迷わず突き進め。分かったか?」
といつもの微笑みではなく、ドヤ顔をされた。
俺の行動パターンを完全に読んでいる!そう思った。

と聞き返した。
「友達をご飯に誘って何か悪いことでもあるか?」
「あ、確かに…」
「ここぞ!という時は、周りなんか一切見ず、ひたすらに突き進む。これが手に入れる者と手に入れない者の違いや。」
「うん!うん!」
「迷わず行けよ、行けば分かるさ。」(アゴを突き出しながら)
とっさに反応してしまった俺は、「猪木すな!!」と人生で初めてじいちゃんにツッコミを入れ、お互い「ハハハッ」と笑った。
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エピローグ:戦争を生き抜いた祖父の過去...そして現在

「わしが、戦争に行ったって話聞いてんのか?」
「聞いたで。」
「ちょうど今のお前ぐらいの年やったな~。いや、それよりもたぶん若かったな~。それはもう、いつ死ぬか分からん世界やった。1日の中で死ぬかもしれない!と思うことが何度もあった。5秒前に一緒にバカ笑いしていたやつが急に吹き飛んでたり、落ちている腕を拾って死にかけてる戦友に渡したり、精神錯乱して自決するやつがいたり、挙句の果てには、ネズミもヘビも虫も食べた。生きるためには仕方なかった。死にたくないやん!そん時じいちゃんまだ童貞やったしな!(笑)せめてヤッてから死にたいやん!何とか運よく、身体も丈夫で国に帰ってきた。今までお前に言ってきたことは、戦争の中で培った生き残るための術みたいなもんや。まぁ、わしの親父、つまりお前にとっては曽祖父からの教えやけどな!」
「俺の年齢でそんな経験してたんや…」
「帰ってきたら、もう怖いもんなくなった。それで、かなりの好色になった。ばあちゃんと結婚するまでに100人ぐらいと遊んだと思うぞ。まぁ、ばあちゃんと結婚した後も遊んでたけどな!そんな経験してたら、どこで困ってるのかも分かるし、大事なポイントも分かる。お前の母ちゃんにも、ばぁちゃんにも言ってないこともある。何人かは認知してないけど、俺の子はいると思う。まぁ、ホンマのところは知らんけど。」
結構な衝撃発言にビックリしたが、それだからと言ってオカンに言おうとも思わなかったし、じいちゃんを憎む気持ちも嫌いになる気持ちもなかった。むしろ、カッコイイと思えた。何より、オカンにもばぁちゃんにも言ってないことを俺に言ってくれたことが嬉しかった。
「めっちゃ喋るやん!じいちゃん!」とまたしてもツッコミを入れ、「隠してたんや!」と言われ、またお互い「ハハハッ」と笑った。
じいちゃんの3つの教えである「目先ばかりを見るな、先を見ろ」・「正面から攻めるな。周りから攻めろ」・「機を逃すな。男たるもの機を見つけたら迷わず突き進め」は、今思えば恋愛の枠を超え、人生にも通じるように思えてならない。
じいちゃんの教えを忠実に守った俺は、その後無事にカンナと付き合うことになり、そのままめでたく結婚した。残念ながら結婚式を予定していた年の元旦にじいちゃんは亡くなり、結婚式には参加できなかったが、カンナと初めて会ったじいちゃんは、こう話した。
「こんな綺麗な子を捕まえるためにコイツに助言した、わしもまだまだ現役やな!」とカンナと俺にドヤ顔をした。
「90歳の老人が何言ってんねん!」とツッコミ、3人で「ハハハッ」と笑った。
今はカンナと子ども2人の4人家族でじいちゃんが建てた家で暮らしている。大学時代からカンナ一筋だった俺は、じいちゃんのプレイボーイ遺伝子はどうやら引き継いでいないみたいだ。
(じいちゃん、ありがとう!おかげさまで幸せやわ。)といつも心の中で語りかけている。
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